BAD TUNING

2009年2月11日(水・祝)、第38回マンドリン四重奏演奏会が、サッポロの「かでる2・7」で開催されました。(※「マンドリン四重奏演奏会」についての詳細は、去年の記事を参照くだされ。)

今回もSound-Holeは五重奏での出演ですが、いけやん作曲の合わせるのが難しい曲で合図を出す役を拒否ったぴよが(暴露〜〜〜♪)マンドリンからマンドラにコンバートしたため、1st マンドリンいけやん、2nd マンドリン:asaking、1st マンドラ:ぴよ、2nd マンドラ:幾狭、マンドセロ:azkn氏 と、若干変則的なパート割りになりました。

演奏曲目は、
 いけやん作曲「neutral」
 J.ダウランド「女心をつかむこつ」
の2曲でした。

前述のように「neutral」は合わせるのが難しい曲ですが、合えば弾いていて気持ちのいい曲です。
聴いていて気持ちがいいかどうかはアレですが。
いやたぶん、聴いていてもイイ感じの曲なんじゃないかと……調弦が合ってさえいれば……

「女心をつかむこつ」は、いけやんが申込書に書いた段階では「Fine knacks for ladies(女心をつかむこつ)」だったはずなのですが、プログラムには思い切り「女心をつかむこつ」で掲載されました。
この曲、いろいろ邦題あるんですけど、よりによって一番意訳っぽい題です。直訳に近い邦題だと「ご婦人用のすてきな飾り物」って感じになりますか。
うさんくさいアクセサリー商人が調子よく売り言葉を並べる歌で、たいへんよく響く曲なんですが……調弦さえ合っていれば……

そんなわけで、2月10日(火)、楽器と着替えと洗面用具を持って出勤いたしました。
職場からいったん帰宅してから出かけていては、サッポロ行きの特急の終発に間に合わないだろうと判断したためです。
なぜ前日のうちに出かけるかというと、当日出発だと始発に乗ってもサッポロ到着が昼過ぎになり、リハーサル無し一発本番というオソロシイ事態になってしまうためです。
正解でした。
10日の夕方、某○ョーショクインクミアイの会議に出てから出発でギリギリ間に合うかと思いきや、会議が長引いてしまったのでした。
発車時刻の5分前、会議での自分の出番が済むと同時に「ゴメンナサイ、用事があるので帰ります!」と言い捨てて車に乗ったところ、フロントガラスに霜がおりていて前が見えません。
ガラスに手を当てて強引に霜を融かし、どうにか視界を確保して駅に向かいました。
ほんとの駆け込みセーフ。
次の駅に着くくらいまで、座席で半分死んでました。

しかし、前日に出ないと間に合わない状況のおかげで、ある意味当日はラクです。
いけやんのブログ見たら、彼女は当日5時頃に起きて、お子さんにメシ食わせてから来てます。
偉大だ……

というワタクシは、そのいけやんの会場到着予定時刻を9:30と聞いていたはずなのに10:30と勘違いし、まあ11:00前くらいまでに着けばいいだろうと思ってそういう時間に実家を出たら、あまり遅いので心配したぴよがワタクシのケイタイに電話を入れました。
ところがワタクシはケイタイ苦手でして、かかってきた電話の受け方が実はよくわかりません。
しょうがないので折り返しぴよのケイタイにかけたのですが、誰も出ません。
あとで聞いたら、ぴよはワタクシのケイタイの伝言に「電話ちょうだい」と入れたあと、自分のケイタイをカバンの中にしまってしまったのでそうです。
ワレナベにトジブタの見本市。

あやうく幾狭さんの大ボケで(この団体内ではツッコミのはずだったのだが……)リハ前にみんなで合わせられなくなるところでしたが、なんとか練習することができ、不安が増大。
リハでさらに危機感が上昇。
開演時間も過ぎて、ほんとは他の団体さんの演奏を聴きたいところなのですが、我慢してあとでCDで聴くことにして楽屋で練習してました。(メンバーのオリジナル曲を演奏する団体さんがウチの他にもう1つあったんで、その演奏には間に合うようにホールに行きましたが。)

前置きが長くなりましたが、ついに出番です。
直前の高校生の団体がやたらめったら上手く(モーツアルトの「アイネクライネナハトムジーク」でした)、舞台袖でかかなくていい冷や汗を流した後、ステージへ向かいました。

舞台上で軽く音を確かめた瞬間、やばい、と思いました。
楽屋で調弦してきたはずなのですが、おそろしいほどに合ってません。
制限時間もあるので、とにかく二弦だけ合わせて演奏を開始しますが、やっぱりキモチワルイ。
ワタクシはもともと耳も鈍感・手も不器用で調弦は下手なんで「またやらかしたか」と思ったのですが、いくらなんでもここまでひどくないぞ。
そして、よくよく聴いているとすぐ隣でazkn氏のセロの音もなにやら怪しげです。
どうやら、スポットライトの熱が原因のようでした。
ことここに至れば、チューニングが合っていないからと腰が引けた演奏になってはかえってみっともないです。
それにほら、いけやんの曲は「こういう曲なんです」「四分音に挑戦してみました」とかなんとか主張すれば通るかも(いけやん、スマン)。
ダウランドの曲も、ルネサンス音楽だからちょっとエキゾチックな感じなんだと主張できなくも……ごめんなさい。
とにかく、ビビッててもしょーがないから、開き直って弾きました。
このような状況を千年前に活写した方がいらっしゃいましたね。

>かたはらいたきもの よくも音弾きとどめぬ琴を、よくも調べで、心のかぎり弾きたてたる。(『枕草子』第九十六段 より)

演奏自体は、そんなに悪くなかったと思います。
ワタクシは本番では緊張するんで、たいてい楽譜を追うだけで精一杯なんですが、今回は「Fine knacks for ladies」を弾いてるときに、行商人が通行人に景気よく呼ばわっている姿が脳裏にうかんだです。
(行商人の顔がスティングでした……
「neutral」の方も、たろさんが「昆虫の羽化をイメージした」ような感想をお聞かせくださったので、けっこう伝わったんじゃないかと思われます。
ワタクシもあの曲は、「次の瞬間に何にでもなれる状態」みたいな感じかなぁ、と思っていました。「卵の中で孵化を待っている」とか。

あの調弦が客観的に聴くとどの程度のものなのか、CDの出来上がりが待たれます。いや、待ちたくないけど。
まあ、聴けなかった他の団体さんの演奏も聴きたいんで、CDは購入します。

というわけで、当日客席で聴けた団体さんのうち、印象に残ったところの感想など。

☆マリンギター274(マンドラ三重奏)
メンバーのたろさんのオリジナル曲「3つのマンドラのための組曲3 R274」を演奏しました。
国道を疾走してる感じの曲です。ワタクシは、R 274自体は何度か横切ったことがあるだけなのですが、近くはけっこう(自転車で)走っているので、「そうだよほっかいどの国道はこんな感じだよ〜」と思いながら聴いていました。とても爽快です。
メンバーのみなさんのかぶりものもチャーミングでした。
そして、たろさんが退場のときにクマさん帽子をとるパフォーマンスは更にチャーミングでした。

☆札幌マンドリン倶楽部 低音研究会(マンドセロ三重奏)
ドラ三重奏も珍しいですが、セロ三重奏となると相当チャレンジャーです。しかし、さすが札マンという感じの楽しい演奏でした。
どちらかというと、軽音系のノリの良い最初の二曲の方が、クラシック系の後の二曲よりセロの渋い音に合っているように思いました。

☆木安め(二重奏:マンドリュート、マンドローネ)
マンドリュートリュートモデルノ)は、マンドラとマンドセロの音域をカバーした楽器で、古楽器リュートとは別の、マンドリン系の現代楽器です。たしかワタクシは実物を見たのはこれがはじめてです。
マンドローネは、マンドリン系の最低音楽器ですが、ほっかいどには三台しか存在しないという噂を聞いたことがあります。現代の多くのマンドリンオーケストラでは、最低音のパートはコントラバスがつとめています。
よもやこの組み合わせの二重奏にお目にかかれるとは。
曲は「チェロとコントラバスのための二重奏曲」。
途中でローネの楽譜が譜面台から滑り落ち、しかも長く繋ぎ合わせて蛇腹に折りたたんだ楽譜だったので回収が困難で、拾い上げている間中、手に汗を握って見守ってしまいました。
拾い上げて譜面台に戻した直後、マンドローネのカデンツァがスタート。あのバカでかい楽器でカデンツァ! しかもあの状況で! よく弾ききったなぁ、と思いました。
ローネ不在の間のリュートも冷静に弾いてました。すごいです。

かくのごとく、弾く方でも聴く方でも楽しんだ一日でした。
運営してくださった皆さま、聴きにきてくださった皆さま、ありがとうございました。

追記:今回はさすがにメンバー全員気をつけていて、楽屋に忘れ物はしませんでした。
でも、誰かの忘れ物を運営の方が「これ、Sound-holeのどなたかのではありませんか?」とわざわざ確認に来られました……(前科者